

2008年に起きたリーマンショックは現代の投資を考える上で欠かせない存在となっています。
今回はそのリーマンショックについて見ていきましょう。
リーマンショックとは?
2008年9月、アメリカの証券会社(および投資銀行)であるリーマン・ブラザーズが約64兆円の負債を抱えて経営破たんしたことがきっかけとなって起きた世界的な金融危機のことです。
日本でも株価が急激に下がったり、円高が進んだり、と影響を受けました。
また全世界的に経済が縮小したことにより、日本経済も深い痛手を負いました。
リーマンショック時のFXチャート
2008年〜2009年の米ドル/円チャートです。
2008年9月8日、米国財務省が追加で約3兆ドルをつぎ込む救済政策が決定。
2008年9月15日、リーマン・ブラザーズは連邦倒産法第11章の適用を連邦裁判所に申請する。
9月8日週の高値は109.08、安値は106.07。
9月15日週の高値は108.03、安値は103.54。
その後、およそ1ヶ月後の10月20日週までひたすら下がり続け、安値90.91を付ける。
高値から約1ヶ月で18円の下落となった。
その後、一旦持ち直しの動きを見せるも12月15日週に安値87.14円をつけるまで下落は止まらなかった。
原因はサブプライムローン
リーマン・ブラザーズといえば全米第4位、倒産するまで格付けAAAを誇っていた名門金融機関です。
なぜ史上最大約64兆円もの負債を抱えて倒産することになったのでしょうか。
リーマン・ブラザーズ倒産の大きな原因となったのがサブプライムローンです。
サブプライムローンとは?
サブプライムローンは、サブ(2番目、格下の、代理の)+プライム(1番目の、最高位の、主な)+ローン(貸し付け金)という語の組み合わせで、上等でない客への融資、簡潔にいえば「低所得者向け住宅ローン」のことでした。

一般に銀行は、経済的な信用度が高い顧客にしかローンを組ませたがりません。
なぜ低所得者に高額な住宅ローンを、しかも多数、一斉に組ませたのでしょうか。

その理由のひとつは「高金利」で、金利の設定を高くしたことです。
しかし相手は低所得者。返済できない顧客が出てくるリスクについてはどう考えたのか?
こう考えたのです。
「返せなくなるやつはごく一部。大多数のやつは返すだろうから大丈夫。なにしろ金利が高いからね。返せなかったやつの分も、返したやつの分でカバーできるさ」

もうひとつの理由は、サブプライムローンが始められた当初は土地や住宅の値段が上がり続けていたことです。
そこで借りる方も貸す方もこのように考えたのです。
「何かの理由でローンが返済できなくなったら家を売れば済む話」
ここで注目すべきは、日本とアメリカでの住宅ローンの仕組みの違いです。
日本では、住宅ローンが返済できなくなったら、担保である家や土地を差し出すことはもちろん、それだけでは不足した費用も返済しなければなりません。
ところがアメリカでは住宅を担保にローンを組み、ローンの返済ができなくなったら住宅を引き渡して、それ以上の返済はなくなります。
サブプライムローンが膨れ上がった原因
サブプライムローンはしばらくの間、借りた方貸した方ともうまく回っていました。
高金利だから貸した方は儲かり、借りたほうも好景気の中、返済が滞る心配もありませんし、買った家や土地も値上がりしていきます。
この循環でサブプライムローンはどんどん組まれていきました。
振り返ってみると、その時点でアメリカ全土に地雷が埋められたようなものでした。
主なリスク管理が「金利を高くとる」ことだったサブプライムローンですが、さらにウォール街の住人たちは、このように考えました。
「サブプライムローンの債権を証券化して売ったらリスクヘッジになるし、もっと儲かるに違いない!」
なるほど。けれどもこうなってくるとモノとお金の動きがかけ離れてきます。
「いつまでもこんなことが続けられるだろうか?」と考えられる人が多くなればよかったのですが、バブリーなムードにのみこまれたのか、勢いはとまりません。
しかも債権を証券化して売り出すにあたって、ウォール街の住人の知恵が後々「凶」となったアイデアが加わりました。
「サブプライムローンだけじゃなくて、他のもっと信用度の高いローンと抱き合わせで売ろう。これでより強力なリスクヘッジになるし、もっと儲かるぜ!」
こうしてサブプライムローンの債権は、他のローンとも抱き合わせの上証券化されて、アメリカ中、さらには世界中にばらまかれました。
当時はローリスクハイリターンの人気商品とされ、大いに売れたのです。
これで、サブプライムローンで動くお金が膨れ上がりました。
そして債権化されて売り出された証券が、他のローンとも抱き合わせになったことでより一層「踏んでみるまで分からない」地雷と化してきました。
サブプライムローンの破綻

サブプライムローンが膨らんだ原因のひとつが住宅と土地の値上がりが続いていたことでした。
けれどもバブル景気を恐れたFRB(アメリカの中央銀行に当たるもの)による金利の引き上げにより、家と住宅の値段が下がり、景気も後退しはじめました。
そうなってくると、もともとサブプライムローンを組んでいたのは低所得者。
景気が悪くなってくるとまっさきに一時解雇や解雇の憂き目にあう人が多く、返済が滞って家と土地を手放すことになります。
とはいっても売値は下がって赤字で処分することに。
借りた方は家、土地を失い、貸した方は貸したお金が回収できず、大赤字。
こうしてサブプライムローンの破たんがアメリカ全土を覆いました。
リーマン・ブラザーズ社の破綻

最も多くのサブプライムローン抱えていたリーマン・ブラザーズ。
サブプライムローンの破たんだけではなく、サブプライムローンを債権化したときにサブプライム以外のローンも抱き合わせにしていたことが大問題でした。
どの金融商品にどれくらいサブプライムローンが抱き合わされているのかよく分からなくなっており、自分が持っている証券のどれがどれだけ下がるのか分かりません。
そこで、多くの投資家がこのように考えました。
「いいや、暴落する前に全部売ってしまおう」
皆が同じように考え、サブプライムローンが含まれていた証券も、含まれていなかった証券も投げ売りされました。
こうしてリーマン・ブラザーズは多額の負債を抱えて破たんしました。
全米4位の投資銀行でしたから大きすぎて他の民間企業では吸収合併できるところがなかったようです。
またさまざま理由が取りざたされていますが、米国政府もリーマン・ブラザーズを救済しませんでした。
リーマンショックはこうして起きた
2008年9月15日、リーマン・ブラザーズ破たんの報が流れると、全世界の金融市場で大暴落が起きました。
これが100年に1度といわれる大不況を引き起こす端緒となった「リーマンショック」です。