


今回は、株やFXでおなじみの「指値・逆指値注文」についてのおさらいです。
「指値・逆指値注文はこういうもの」だけではなく「こういう時には指値または逆指値注文が便利」ということも踏まえて解説していきたいと思います。
指値・逆指値注文・成行注文の基本
まず、「指値・逆指値注文」について「成行注文」と比較しながら簡単におさらいしましょう。基本的なことが理解できている人は、次の「指値・逆指値の違いと使い方」を参照してください。
成行注文とは?
メリット | デメリット |
---|---|
必ず約定する 今すぐ約定できる | スリッページが発生する |
今すぐエントリーしたほうが良いのであれば「成行注文」を出します。
成行注文とは、「価格は指定しないから、今すぐに注文を通してください」と、証券会社やFX会社に注文を依頼することなので確実に約定します。
これは、新規注文・決済注文・買い注文・売り注文の全てにおいて使えます。
しかし、通信状態・業者のサーバー処理・流動性・急激な価格変動といった理由から、スリッページを起こすことも多々あるので注意が必要です。
※スリッページとは、画面上の注文価格と実際の約定価格が、有利または不利にズレてしまうことです。
指値・逆指値注文とは?
メリット | デメリット | |
---|---|---|
指値 | 指定した価格で約定する 押し目買い・戻り売りで多くの利益が狙える | 注文後トレンドが変わると大きな損失を被る |
逆指値 | 指定した価格で成行注文を出せる トレンドの波に乗るので確実性が高い | 今すぐ成行注文するより利益は減る 中身は成行注文なのでスリッページが発生する |
指値・逆指値注文は、ある価格(トリガー価格と言います)にレートが達すると、証券会社・FX会社に自動的に注文を依頼する仕組みです。
こちらも新規注文・決済注文・買い注文・売り注文の全てにおいて使えます。
もう少し相場が動いてからエントリーした方が利益が狙えるといったときや、あらかじめ利益確定や損切りの設定をしておくときに使えるのでとても便利です。
利益を限定したり、損失を限定したりする効果があるので、指値注文のことを「リミットオーダー」、逆指値注文のことを「ストップオーダー」とも呼びます。
トリガー価格は、指値注文が「今より有利な価格」、逆指値注文が「今より不利な価格」となるように指定します。
- 今より有利な価格で注文したいときは指値注文
- 今より不利な価格で注文したいときは逆指値注文
有利・不利といっても分かりにくいかもしれないので、トリガー価格との関係をまとめます。
青字部分が指値・逆指値注文が正しく機能するトリガー価格、赤字部分は注文できないのでエラーになります。
トリガー価格 | 買 | 売 | ||
---|---|---|---|---|
指値 | 逆指値 | 指値 | 逆指値 | |
100.40 | 【不利な価格】 注文不可 | 【不利な価格】 トリガー価格 で成行注文 | 【有利な価格】 トリガー価格 で約定 | 【有利な価格】 注文不可 |
100.30 | ||||
100.20 | ||||
100.10 | ||||
100.00 (現在価格) | 【有利な価格】 注文不可 | 【不利な価格】 注文不可 | ||
99.90 | 【有利な価格】 トリガー価格 で約定 | 【不利な価格】 トリガー価格 で成行注文 | ||
99.80 | ||||
99.70 | ||||
99.60 | ||||
99.50 |
※米ドル/円の現在価格が100円の場合
例えば、上昇トレンド中に、現在価格より高い価格を指定して買い注文をしたいときは、今より期待できる利益が減るので「不利」、つまり逆指値注文をします。
上昇トレンド中に、現在価格より安い価格を指定して買い注文をしたいときは、今より期待できる利益が増えるので「有利」、つまり指値注文をします。
成行・指値・逆指値注文の優先順位
成行・指値・逆指値注文が、何を優先して約定しているのかまとめます。
成行注文は、約定優先の注文方法です。
画面で見た価格で注文すると、早い者勝ちで注文が処理されていくので、スリッページによって約定価格が注文価格とズレてしまう可能性があります。
指値注文は、価格優先の注文方法です。
レートがトリガー価格が達するとその価格で約定します。
逆指値注文は、約定優先の注文方法です。
指値注文と違うのは、レートがトリガー価格を超えると「成行注文」を証券会社・FX会社に自動的に依頼し、早い者勝ちで注文が処理されていくので、スリッページの可能性があります。
そのため、逆指値注文は必ずトリガー価格で約定するとは限らず、成行注文と指値注文の特徴を合わせた注文方法と言えます。
- 成行注文は、いくらでも良いので約定優先(スリッページあり)
- 指値注文は、トリガー価格で注文し、価格優先(スリッページなし)
- 逆指値注文は、トリガー価格で注文し、約定優先(スリッページあり)

指値・逆指値注文の疑問と注意点
ここでは指値・逆指値注文についてよくある疑問に、注意点などを踏まえながら解説していきたいと思います。
指値注文が約定しないことはあるか?


見ているチャートが違う
まず、単純に見ているチャートが違う可能性があります。
業者の配信レートには「BID(売)」と「ASK(買)」の2種類がありますね。これはプライスボードを見れば一目瞭然です。
- BID=売り注文が約定する価格
- ASK=買い注文が約定する価格
そして、当然チャートにもBIDとASKが存在します。
業者によっては、片方ずつしか表示できないところもあれば、両方同時に表示できるところがあります。ヒロセ通商などは同時表示にでき、スプレッドも一目瞭然なのでとても便利です。
例えば、米ドル/円の買い指値を109.168円で注文していたとします。
BIDチャートだけを見ていたとすると、上記の期間中に109.168円に達していますが、その時点では本来みるべきASKチャートは109.185円なので約定しません。

ラウンドナンバーに指値を置いている
次に、ラウンドナンバーに指値を置いた場合も、約定しない可能性があります。
ラウンドナンバーというのは、「キリの良い価格」のことです。
例えば、米ドル/円の場合「100円、101円、102円…」などは明らかにキリの良い価格です。
さらにFXでは「100.10円、100.20円、100.30円…」など10pips単位もキリの良い価格として多くのトレーダーが指値を置くため注文が集中します。
テクニカル分析をした結果「ここだ!」と決めた注文価格がラウンドナンバーであれば、他の多くのトレーダーも同じように「ここだ!」と考えている可能性が高いです。
指値注文はトリガー価格で約定する予約注文のような仕組みでしたね。
しかし、人気アイドルのライブチケットを予約注文しても必ず買えるとは限らないように、買い指値の場合もその価格の売り注文が全て約定してしまえば買うことはできません。
ライブの入場者数に限りがあるように、買い指値が約定できる数量にも限りがあるということです。
このことは、売り指値の場合も同じです。


指値注文が「不成立」の場合の手数料は?


FXは売買手数料無料のところが多いのですが、株の場合は売買手数料がかかります。
しかし、売買手数料は注文が約定しなければ発生しません。
そのため、指値の不成立、指値・逆指値注文の取消については手数料無料、スプレッドも決済しなければ発生しないコストなので実質無料です。
逆指値狩り(ストップ狩り)とは?


例えば、上手く下降トレンドに乗り「売り成行注文」をエントリーできたとします。
そして、同時または後から決済注文として「買い指値注文(利益確定)」「買い逆指値注文(損切り)」を出して置きます。(このような注文方法は、後述するOCO注文で可能です)
しばらく下降トレンドがそのまま続いたので「利益確定が近いな」と思った矢先、突然のスプレッドの拡大によってASK(買)レートが損切りポイントに達して約定してしまいました!
本来の狭いスプレッドのままであれば、間違いなく利益確定ができていたはずなのでガッカリです…。
これが重要指標発表時のことなら、スプレッド拡大リスクを考慮しなかった自分の甘さが招いたこととして納得もできます。
しかし、次の3つの点を忘れてはいけません。
- 相対取引業者では「顧客の利益は業者の損失・顧客の損失は業者の利益」なので、顧客が損切りをすればするほど業者は儲かる
- 相対取引業者の配信レートは業者独自のレートなので、やろうと思えば意図的にスプレッドを拡大させることができる
- 業者はどの価格にどのくらい損切りポイントを置いている人がいるのか把握している
先ほどの例は、一人のトレーダーの損得だけで考えていますが、もし多くのトレーダーが同じパターンの注文をしており、このままいくと利益確定をするトレーダーが続出するとしたらどうでしょう?
業者はそれを阻止すべく、その人たちの損切りポイントに向けてスプレッドを広げようと考えます。
つまり、業者側は逆指値注文によって大きな損失が出ることが分かっている場合、それを強制的に大きな利益に変換することが可能なのです。
これが、いわゆる「逆指値狩り(ストップ狩り)」というやつです。


指値・逆指値の違いと使い方
ここからは、実際にチャートを見ながら「こんな時にはこの注文」という感じで説明して行きます。
パターンは「新規注文か決済注文か?」「買いか売りか?」「評価損がプラスかマイナスか?」で大きく分けて全16パターン、どれも取引していればよくある状況です。
新規注文の場合
新規注文ですが、初心者の人は初めはトレンド相場で取引したほうが良いと思いますので、ボックス相場やレンジ相場での考え方はここでは詳しく触れません。
ではまず、新規注文に指値・逆指値を使う場合ですが、トレーダーが「より多くの利益を狙う」か「確実な利益を狙う」かによって指値・逆指値注文を使い分けます。
「上昇トレンドで買いポジションを持つ状況」「下降トレンドで売りポジションを持つ状況」に分けて見て行きましょう。
トレンド予想、投資家心理、注文内容の関係
トレーダーは、「新規注文」の前に必ず次のことを期待します。
- 今より価格は上がるはず(下がるはず)
そして、次のようなアクションを起こすと思います。
- トレンドにこのまま乗りたい
- もう少し安く買おう(または、高く売ろう)
パターン①③は、現在価格より不利な価格で注文を出すため逆指値注文です。
手法としては順張りなので、成行注文よりも期待できる利益は少なくなりますが、トレンドの波に乗るため確実性の高い注文方法です。
しかし、トレンドが変わったと思っていたものが、実は次に説明する戻り売りによる一次的な反発だった場合は大きな損失を被るので、ダマシには注意しましょう。
パターン②④は、現在価格より有利な価格で注文を出すため指値注文です。
このことを「押し目買い」または「戻り売り」とも言います。
手法としては逆張りなので、成行注文よりも多くの利益が期待できますが、もし現在価格が相場の天井(または、底)だった場合は、トレンドが反転して大きな損失を被るためリスクの高い注文方法と言えます。
そのため、テクニカル分析をして移動平均線にタッチするなどの十分な根拠が必要です。
決済注文の場合
次に、決済注文で指値・逆指値注文をする場合についてですが、こちらはポジションを保有した状態で今後のアクションを決める状況なので「現在の損益がプラスかマイナスか」も考える必要があります。
そのため、考えられる状況として「損益がプラスの場合の、買い(または売り)ポジションの決済」「損益がマイナスの場合の、買い(または売り)ポジションの決済」に分けて見ていきましょう。
また、これを先ほどの新規注文と同時に出すことで、ボックス相場・レンジ相場での新規注文時のリスクを少なくすることができます。
これは、後述する「IFD注文」「OCO注文」で実現可能です。
損益がプラスの場合
トレンド予想、投資家心理、注文内容の関係
予想 | 今より価格は 上がるはず | 今より価格が 下がるかも | ||
---|---|---|---|---|
投資家心理 | より多くの 利益を狙おう | 最低限の利益 を確保しよう | 念のため損切り を設定しよう | |
注文 内容 | 売買 方向 | 売 | 売 | 売 |
指値 逆指値 | 指値 | 逆指値 | 逆指値 | |
トリガー 価格 | 現在価格より 高い価格 | 現在価格より 安い価格 | 注文価格より 安い価格 | |
パターン | ⑤ | ⑥ | ⑦ |
ポジションの損益がプラスのときは、次のことが考えられます。
- 今より価格は上がるはず(または、下がるはず)
- 今より価格は下がるかも(または、上がるかも)
そして、次のようなアクションを起こすと思います。
- より多くの利益を狙おう
- 最低限の利益を確保しよう
- 利益は出てるけど念のため損切りを入れておこう
パターン⑤⑧は、最大限の利益を狙うための注文で、現在価格より有利な価格で注文を出すため指値注文です。
しかし、この先トレンドが反転してしまえば大きな損失が出てしまうので注意が必要です。
そのため、万が一に備えストップ注文も同時に入れてリスクを回避したほうがよいでしょう。これは後述する「OCO注文」で実現可能です。
パターン⑥⑨は、この先トレンドが反転した場合に最低限の利益を確保するための注文で、現在価格より不利な価格で注文を出すため逆指値注文です。
利益が出ているとついつい欲張ってしまいがちですが、この注文を入れておくことでトレンドが反転してもポジションは確実に利益になります。
パターン⑦⑩は、現在価格が注文価格を超える(または、割り込む)ことを考慮した注文で、現在価格より不利な価格で注文を出すため逆指値注文です。
ある程度の含み損は許容して、その先トレンドが戻ることを期待していますが、万が一のための損切りを設定したほうが安心です。
損益がマイナスの場合
トレンド予想、投資家心理、注文内容の関係
予想 | 今より価格は 下がるはず | 今より価格が 上がるかも | ||
---|---|---|---|---|
投資家心理 | 損切りの限界 を設定しよう | 少しでも損失を 少なくしよう | トレンドの反転 を待って 利益確定しよう | |
注文 内容 | 売買 方向 | 売 | 売 | 売 |
指値 逆指値 | 逆指値 | 指値 | 指値 | |
トリガー 価格 | 現在価格より 安い価格 | 現在価格より 高い価格 | 注文価格より 高い価格 | |
パターン | ⑪ | ⑫ | ⑬ |
ポジションの損益がマイナスのときは次のことを考えます。
- 今より価格は下がるはず(または、上がるはず)
- 今より価格は上がるかも(または、下がるはず)
そして、次のようなアクションを起こすと思います。
- これ以上の損失を出さないように損切りを設定しよう
- 少しでも損失を少なくしよう
- トレンドの反転を待って利益確定しよう
パターン⑪⑭は、これ以上、含み損が増えないように損切りを設定するための注文で、現在価格より有利な価格で注文を出すため逆指値注文です。
これは絶対に入れて置いたほうが良いでしょう。
パターン⑫⑮は、少しでも損失を少なくするための注文で、現在価格より有利な価格で注文を出すため指値注文です。
この注文を置く場所の判断は難しいところなので、相場の状況に応じてケースバイケースで使います。
パターン⑬⑯は、トレンド反転を期待して利益確定をするための注文で、現在価格より有利な価格で注文を出すため指値注文です。
ある程度の含み損は許容して、その先トレンドが戻ることを期待していますが、万が一に備えストップ注文も同時に入れてリスクを回避したほうがよいでしょう。
こちらも後述する「OCO注文」で実現可能です。
さまざまな指値・逆指値注文
IFD注文
IFD注文(または、IF-DONE注文)は、「指値・逆指値注文の違いと使い方」で解説した「新規注文の指値または逆指値注文」と「決済注文の指値または逆指値注文」を、1つの注文画面で同時に出すことができる便利な機能です。(もちろん「成行注文」でも可能)
ほとんどの証券会社・FX会社で利用できます。
OCO注文
OCO注文は、予想したトレンドの方向に指値・逆指値注文を一つ、予想とは逆の方向に指値または逆指値注文をもう一つ設定し、どちらか片方が約定したらもう片方がキャンセルとなる注文を一つの画面で同時に出すことができる、これまた便利な機能です。
前述の「指値・逆指値注文の違いと使い方」で解説した新規注文は、基本的にトレンドの波に乗ることを前提に解説しました。
しかし、必ずしもそのままトレンドが続くとは限りませんよね?
そこで、OCO注文を新規注文に利用すれば「相場が上がっても下がっても」エントリーできます。
OCO注文を決済注文に利用すれば、「利益確定と利益限定」「利益確定と損切り」など、今回解説したパターンをいろいろな形で組み立てて注文できます。
こちらもほとんどの証券会社・FX会社で利用できます。
寄指(よりさし)
寄指(よりさし)とは、主に株式で使われる注文方法で、取引を寄付(よりつき)だけに絞った指値注文です。
寄付とは証券取引所の前場(ぜんば)と後場(ごば)の最初の取引(またはその値段)のことです。
売り注文と買い注文を整理してまとめて売買を成立させる板寄せ方式が採用されているため、指値注文であるにもかかわらず指定した価格より有利な価格で売買できる可能性があります。
引指(ひけさし)
引指(ひけさし)とは、主に株式で使われる注文方法で、取引を前引け(ぜんびけ)または大引け(おおびけ)だけに絞った指値注文です。
前引けとは前場の最初の取引や価格のこと、大引けとは後場の最初の取引や価格のことです。
寄指と同じく、売り注文と買い注文を整理してまとめて売買を成立させる板寄せ方式が採用されているため、指値注文であるにもかかわらず指定した価格より有利な価格で売買できる可能性があります。
不成(ふなり)
不成(ふなり)とは、主に株式で使われる注文方法で、ザラ場(ザラバ)中は価格優先の指値注文として注文されていますが、全部または一部が約定していなかった場合は、前引けまたは大引けの時点で約定優先の成行注文に変換されます。
ザラ場とは寄付から引けまでの取引時間のことで、価格優先で売買を成立させるオークション方式が採用されています。
追跡指値
追跡指値は「松井証券」の注文方法で、OCO注文と似た注文方法です。
OCOでは二つの決済注文を同時に出し、どちらか片方が約定すればもう片方がキャンセルになる仕組みででした。
追跡指値は、指値の決済注文を一つだけ出します。
ただし、指定した価格以下(または以上)になったら指値のトリガー価格を別の価格に変更できます。
つまり、指値のトリガー価格を変更するためのトリガー価格も指定できるため、相場の動きを追跡して約定価格を変更できる注文方法です。